宝石買取店で古いダイヤモンドを査定してもらったら「経年劣化している」と言われた。
そんな話を聞いたことがあるかもしれません。
店員がなぜ「劣化」と言ったのか分かりませんが、ダイヤモンドは100年程度の時間経過で品質が低下することはありません。
欠けや汚れを劣化と表現したのかもしれませんが、何もしていないのにダイヤが紫外線劣化や酸化などで経年劣化するというのは誤りです。
傷は付かないが割れることはある
ダイヤモンドはモース硬度10。これは最も固い鉱石ということです。
ダイヤ同士を擦り合わでもしないかぎり、表面に傷が付くことはありません。
ただ、モース硬度というのはひっかいたときの「傷の付きにくさ」を示すもの。
「割れにくさ」で言えば、ルビー、サファイア、翡翠(ひすい)の方が上です。
なかなか傷付かないガラスでも衝撃を加えると簡単に割れてしまうように、ダイヤモンドも強く叩くと割れてしまうんです。
可能性はとても低いですが、指輪の装着中に割れやすい角度に強い力が加わると運悪く欠けてしまうことがあります。
万が一欠けてしまった場合は再研磨するか、欠けた箇所を隠すセッティングにリフォームするか、気にせずそのまま使うかといった対処が考えられます。
ダイヤモンドをハンマーで叩く動画
ジュエリー専門店が実際にハンマーで叩く動画をアップしていますので、そのシーンを紹介します。
動画ではむしろハンマーの方がダメージを負っているのが分かります。
LUCIR-K Channel「ダイヤモンド検証動画第1弾!ダイヤモンドを割ってみる!?」
ただ、新しいハンマーを購入して挑んだ第2弾の動画では砕くことに成功しています。
白く濁って見えるのは表面の汚れ
紫外線や空気の影響で、透明だったダイヤが白く濁ってしまうことはありません。
濁ったように見えるくすみは表面の汚れなので、汚れを取り除けば元の輝きが戻ります。
皮脂などの脂汚れ
ダイヤモンドは親油性といって、油に馴染みやすい性質があります。
皮脂や化粧品に含まれる油などが付着すると、一時的に輝きが減少してしまいます。
シャンプーなどの石けんカス
手洗いやお風呂に入ったときなどに、石けんカスが指輪に蓄積していきます。
指輪裏側の光穴が、石けんカスと皮脂が混ざって塞がってしまうことも。
水垢
洗面所の鏡に付いた白い水滴の跡が水垢です。
これは水道水に含まれるカルシウムなどのミネラルがこびりついたものです。
宝石も濡れたままにすると、水分が蒸発してミネラルが残ってしまいます。
燃えると消えて無くなるのは本当
ダイヤモンドが炭素であるというのはよく知られた話です。
炭素の同素体
同じ元素でも、並び方・結合の仕方によって鉛筆の芯などに使われる黒鉛(グラファイト)やダイヤモンドなど、まったく違った性質の物質(同素体)になります。
常温・常圧だと黒鉛、低温・高圧だとダイヤモンドとしての結晶構造で安定します。
ただ、一度結晶化すると別の同素体になるには大きなエネルギーが必要なため、ダイヤを放置していても黒鉛に変化してしまうことはありません。
熱を加えると黒鉛に変化します
100度や200度といった温度では何の影響もありませんが、600度以上で黒鉛化します。
そして1000度以上になると酸素と反応(燃焼)して二酸化炭素になって消えてしまいます。
火事などは1000度以上になるためダイヤが消えて無くなると言われますが、ダイヤモンドの燃焼実験を見る限り、よほどの条件が重ならないとダイヤが燃えるのは難しそうです。
ダイヤモンドを燃やす実験動画
国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)YouTubeチャンネルで、ダイヤモンドを見事に燃やしています。
nimspr「前代未聞!ダイヤモンドに火をつける」
中には変色するダイヤモンドもある
ダイヤモンドは変色しないと言いましたが、どんなダイヤでも絶対に色が変わらないというわけではありません。
人工的に色を付けたトリートメントダイヤモンド
カラーダイヤの鑑定書には「Color Origin(色の起源)」という項目があり、そこに天然か人工かが書かれています。
高温高圧処理、放射線処理などで人工的に変色させる方法があるからです。
内部の結晶構造を変化させる方法なので、この方法で作られたカラーダイヤは経年や摩擦などで色が変わることはありません。
表面をコーティングして着色する方法もありますが、この方法の場合は摩擦などで色がはげてしまう可能性があります。
一時的に色の変わるカメレオンダイヤモンド
特定の条件下で色が一時的に変わるカメレオンダイヤモンドと呼ばれるカラーダイヤがあります。
カメレオンダイヤモンドの多くは普段は淡いオリーブグリーンですが、アルコールランプの炎などで2~300度に加熱すると黄色~オレンジ系に変色し、1~2分ほどで元の色に戻ります。
また冷暗所から明るい場所へ出したときに少し変色するものもあります。
水素が多く含まれるなどの特徴がありますが、変色のメカニズムについて詳しくは分かっていません。
売るよりもリフォームがおすすめ
古いダイヤモンドを売ろうと思っている人は、少し待ってください。
すぐに現金が必要でなければ新しいジュエリーにリフォームすることをおすすめします。
ダイヤモンドは経年劣化しませんが、買った値段と売る値段に大きな開きがあるからです。
お店で買ったダイヤをそのまま買取店へ持って行ったとしても、買い取り価格は購入金額の半額程度になってしまいます。指輪などのジュエリーの場合は5分の1や10分の1なんてことも。
もし後でまた似たダイヤモンドが欲しくなったら「あのとき売らなければよかった」と思うでしょう。
ネックレスにするのもいいですね。
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