婚約指輪にセッティングする0.1カラット以上のダイヤモンドには、品質を示す鑑定書(グレーディングレポート)が付くことが多いです。
公正な鑑定であることの証拠として、第三者機関に鑑定を依頼するのが一般的です。
日本に鑑定機関は100社以上あると言われ、業界内では明確にランク付けされています。
その中で信頼できる機関のみを一覧にしたのでご覧ください。
海外の権威ある鑑定機関
GIAのグレーディングレポート
GIA(米国宝石学会)
ダイヤモンドの国際的な品質評価基準「4C」を定めたのが、アメリカにあるGIAです。
GIAの鑑定書は世界中で認められており、最も権威ある鑑定機関と言えます。
GIAで鑑定されたダイヤモンドはレポート番号で管理され、オンラインでチェックすることができます。
ダイヤのガードル(側面部分)にレーザーでレポート番号を刻印するサービスもあるので、紛失したり盗難に遭ったりしても簡単に同一性を確認することができます。
刻印は10倍のルーペでやっと確認できる程度のサイズなので、そのせいで品質が下がることはありません。
GIAの鑑定書には2種類あります。
大きめサイズの「ダイヤモンドグレーディングレポート」と小さめのサイズの「ダイヤモンド ドシェ」です。
1.0ct以下のダイヤにはドシェがよく用いられます。
ドシェにはプロット図(内包物の位置を示す図)が含まれませんが、その他はダイヤモンドグレーディングレポートと同一の内容です。
2012年に東京にもグレーディングラボが開設されています。
日本の鑑定機関を統括する「AGL(宝石鑑別団体協議会)」も、2006年にGIA基準を導入しています。
そのため、日本のAGLに加入している機関でも、原則としてGIAと同じ鑑定結果が得られます。
HRD(ダイヤモンド・ハイ・カウンシル)
GIAと並ぶ世界的な鑑定機関で、ヨーロッパではGIAよりも権威があります。
ダイヤモンド取引の中心地であるベルギーのアントワープで、ダイヤモンド産業を統括しているAWDC(アントワープ ワールド ダイヤモンド センター)によって運営されています。
ヨーロッパを中心に、HRDが主導する「研磨ダイヤモンド等級付け国際規則(IDC規則)」に準拠して鑑定書を発行する鑑定機関はとても多いです。
ダイヤモンドの鑑定だけでなく、関税の手続きや輸出入の調整、宝石についての教育なども行っています。
ただ、日本ではGIA基準が一般的なこともあり、ブライダルリングブランドでの扱いは少ないです。
国内ブランドで指輪を買うなら、GIAを覚えておけば十分でしょう。
日本の代表的な鑑定機関
CGLのグレーディングレポートとプロポーションレポート
日本には、AGL(宝石鑑別団体協議会)という鑑定機関が集まって作った団体があります。
そこに加盟しているかどうかが、信頼できる会社かどうかの指標のひとつになります。
日本の鑑定機関はジュエリーの問屋街、東京の御徒町に集まっています。
AGLにも加盟している3社を紹介します。
CGL(中央宝石研究所)
日本のダイヤモンドの多くを鑑定しているのが、CGL(中央宝石研究所)です。
日本人の鑑定書好きもあり、発行部数で見れば世界最大級の鑑定機関と言えます。
H&C(ハートアンドキューピッド)のサブレポート(プロポーションレポート)を採用しています。
対称性に優れたカットのダイヤには8個のハートと矢が見えるというもので、必ずしもダイヤの優劣を示すものではありませんが、日本での人気が高いです。
鑑定書の番号とカラットを入力することでダイヤの情報を確認できる「CGLダイヤモンドグレーディングレポート照会サービス」があります。
ただし、照会できるのは鑑定書は過去5年分、ソーティング(ミニ鑑定書)では過去2年分です。
HRDとも提携していますが、鑑定はGIA準拠です。
AGT(AGTジェムラボラトリー)
GIAの日本における代行機関として作られた「日本宝石鑑別協会」の子会社でした。
2015年まではGIA JAPANとしてGIAの鑑定士の資格をとるキャンパスも運営していました。
(現在ではアメリカのGIAが直接教育プログラムを行っています)
特にカラーダイヤモンドの判定に定評があり、微妙な色合いのダイヤはAGTの鑑定結果が重視されるほどです。
かつてはAGTプレミアといって、AGTで鑑定された最高品質のダイヤは他社よりも2~3%高額で取引されたとか。
AGTではハート&キューピッドのことを、「華標(はなしるべ)」と言い、「ダイアモンドグレーディングレポート(華標タイプ)」か「華標(はなしるべ)レポート」で確認することができます。
DGL(ダイヤモンドグレードラボラトリー)
CGLやAGTと比べると歴史は浅いとはいえ、設立は昭和57年。
AGLにも昭和63年に入会しています。
現在では日本の3大鑑定機関のひとつとしてあげられることもあります。
観察装置を開発して特許を取るなど、研究にも力を入れています。
ケイウノやアイプリモ、銀座ダイヤモンドシライシなどのリングブランドや、多くの百貨店で採用されています。
日本のジュエリー業界内でのランク付け
ジュエリー業界では、鑑定機関を信頼性の高さで「A鑑」「B鑑」「C鑑」と分けることがあります。
これはあくまでも俗称なので、厳密な規定で分類されているわけではありません。
GIA・CGL・AGTの3社のみを「A鑑」とする場合もあれば、業界団体であるAGL(宝石鑑別団体協議会)に加盟しているところを「A鑑」と呼ぶこともあるようです。
GIA・CGL・AGTの3社のみを「A鑑」とする場合は、それ以外のAGL加盟機関を「B鑑」と呼びます。
「あそこは一流だね。」といった程度のものだと思えばいいでしょう。
なので「A鑑」かどうかではなく、GIAなのか、もしくはAGLに加盟しているかどうかで信頼性を判断するといいでしょう。
AGL加盟でも絶対に安心とは言えない
日本にはかつて、GAAJ(全国宝石学協会)という鑑定機関がありました。
最も権威のある鑑定機関とも言われ、AGLの正会員でもあったのですが、2010年に倒産してしまいました。
組織的にダイヤの鑑定を甘くしていたという「かさ上げ鑑定疑惑」が出て、AGLを除名されるなどして信頼を失い、百貨店などからの鑑定依頼も無くなったためです。
日本の鑑定機関は営利企業なので、こういった疑惑がつきものなのは事実です。
鑑定を依頼する業者は、ダイヤに高いグレードをつけてもらったほうが儲かります。
鑑定会社の主な収入源は鑑定料です。少しでも甘い鑑定を付けた方が、たくさん依頼してもらうことができるのです。
実はCGLでも1997年に同じような疑惑が出て、AGLを一時期除名されていたことがあります。
実際のところ、同じダイヤでも鑑定士によってグレードが変わることはよくあります。
例えばダイヤのカラーは、DからZまで23段階に等級が分けられます。
でも天然のダイヤモンドの色は無段階でグラデーションになっています。
DとEのちょうど中間くらいの、いわゆるボーダーのダイヤをDにするかEにするかは、鑑定士の主観によるのです。
ボーダーのダイヤに1ランクの差が出るのは、許容範囲と言えるでしょう。
GAAJの鑑定が信頼できるものだったかどうかは、GAAJの言い分(PDF)を読んで自分で判断してください。
心配ならダブルソーティング
かさ上げ鑑定疑惑などで世間を騒がせた結果、現在ではより厳しく鑑定が行われています。
特に日本の「A鑑」と言われる現在のCGLとAGTは十分に信頼されている鑑定機関です。
もし日本の企業が不安なら、忖度の働かないGIAの鑑定書がついたダイヤを選ぶといいでしょう。
それでも心配な人は、2社の鑑定書がつく「ダブルソーティング」のダイヤを探すという方法もあります。
例えば「GINZA TANAKA」では、2社に鑑定を依頼してより厳しい方の評価を採用しています。
「BIJOUPIKO」にも2つの鑑定機関が記されているダイヤモンドがあります。
ただ、それ以外の鑑定レベルが低いというわけではありません。
フリマサイトなどでは、鑑別書なのに鑑定書付きとして売られていることがあります。
おそらく出品者の知識不足によるものだと思いますが、間違えないように気を付けましょう。
-
ダイヤモンドの鑑定書・鑑別書・保証書の違いと必要性
簡単に説明すると、鑑定書はダイヤモンドの品質を評価したもの、鑑別書は宝石の種類や起源を記したもの、保証書はブランドが発行する販売証明書です。 ...